創作落語的Novelette「Twitter殺陣事件」
とある昼下がりの月曜日、相も変わらずTwitterのTLを追い続けていた一人の男がおりました。 男の名は与太郎。 いつも通りの内容を怠惰的に追い続けておりますと、ある1人の人物の発言に目を疑います。
「殺人者、募集中。 時給2000円。 社保完備。」
大丈夫かい?こいつは。
冗談半分の掲示板での殺害予告でさえもお縄頂戴なこのご時世に、堂々と共犯者を募集していやがるよ?
しかも、社保完備って、良く保険に加入出来たねぇ。
しかし時給2000円ってのは、どうなんだい?え? そもそも殺人ってぇのは、時間を掛けてやるものかい? なるべく早く終わらせたいってぇのが人ってもんじゃあないかね?
考えれば考える程気になって仕方がない。 ここは一つ、コンタクトを測ってみることに致しました。
「募集拝見致しやした。 委細をひとつ、宜しくお願いしやす。」
一時待って暮れ六つ、例の旦那さんからreplyが届きます。
「経験人数は? 今まで何人こなした?」
おいおい、いかにもって感じじゃあねぇか。 こりゃあもしかすると、もしかするかもしれねぇな。 どれ、ひとつここは大きく出ようじゃあねぇか。
「射殺10人、斬殺3人、爆殺2人。」
するとすぐに返信が参ります。
「なかなかやるようですな。 組はどこで?」
こうなったら嘘も真にするしかない。
「一匹狼、20年」
暫くすると相手がフォローして参りましたので、こちらもすかさずフォロー返し。
すると今度はDMで、
「あたくしは長屋のご隠居と申します。 そちらさんなかなかの御仁とお見受けしますが、どうでしょう? ひとつ、明日にでも仕事を受けて下さいませんか?」
おいおい、急な話になったねぇ。 しかし、長屋のご隠居、なんてぇのは洒落たコードネームじゃねぇか。 こりゃ益々気分が乗ってきたねぇ。
「それじゃあ、明日、何処に行きゃあいいんだい?」
「GPSの位置を送りますんで、明六時にこちらまでお運び願いますか? 道具はこちらで用意させて頂きますんで。」
「おりゃあマテバと虎徹以外は握らねえよ。」
「心得ました。」
こりゃあ良い心持ちだねぇ。
今夜はカカアに上物の酒を買わせてこよう。
なんてぇ申しておりますれば時は刻々と経ち、遂に明六時、殺人現場に立つ与太郎。
「あれ?おかしいねぇ。 殺人現場にしちゃあ、やけに明るいし、まんだら(手ぬぐい)頭に舞いた野郎共がうろちょろしていらぁ。 まるでテレビ局だよ。」
一刻と経たない内に、セーターを肩に羽織らせたサングラスの男が近づいて参りました。
「いやぁ、お待たせして申し訳ない。 昨日はテッペン超えてしまいまして。 その後ザギンでシースーだったもので。 さあ、始めましょうか。」
「こんな所で人を殺めるのかい?」
「何をおっしゃいます、現場でタテ(殺陣)を演じるのは当たり前でしょう。」
訳の分からなくなった与太郎は、募集要項をもう一度良く見てみると、そこには文末にRTの文字が。
どうやら何度か引用されている間に、文字が変わってしまったのです。
完