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Mon May 25

創作落語的Novelette 「宵の雀荘」

タバコ片手にネクタイ緩め、机を大の大人が囲んでは毎夜の如く繰り広げられる博打といえば、これを麻雀と申しますけれども、学生さん方もハマる方が多いらしく、身銭を切っても挑戦される方も多いそうです。

「おい、八つぁん、この後一丁どうだい?」

「いいねぇ。熊さん昨日も徹マンだろう?好きだねェ。」

こんな調子で毎日の様に、学校帰りに雀荘通いを続けております若い二人がおりました。

「ごめんよっ。おっ、もう皆さんお揃いで。 仕事にゃ精を出さないくせに、卓を囲めば目の色変えて、いけませんねぇ。」

いつもの仲間が牌を拭いて待っておりますれば

「来やがったな青二才共。今日こそ仮りを返させてもらうぜぃ」

「そうは問屋が卸しませんってんだ」

この後日付も変わり、幾度目かの勝負にも関わらず、熊さんが勝ったと思うと次は八つぁんが上がる、といった状態が続きました。

「いや~、良い心持ちじゃねェか。え?どうだい熊さん。この調子で2件目回ろうじゃあねぇか。」

「いいねぇ。今日は特にツキが回ってらァ。いこう、いこう。」

「お前さん、何がツキだい。ツキなんか来なくたって、ジジイ相手に俺たちが勝つのが当然だろ?」

この二人、実はイカサマをしておりまして、何でも最近メリケンで開発されたモスキート音という、若者にしか聴き取れない音を使って、モールス信号の様な暗号通信で互いの手牌を知らせ合い、待ちの手を互いに与え合うという大変にズル賢い事をしては金を儲けておりましたようで、

「またお前らか、よくもまあ天を味方につけ続けていられるねぇ。」

「お天道様も閻魔様も、みんなオイラの味方よ。」

続けて2件目も大勝利。

これは遂に流れに乗ったとばかりに、羽振り良く高い酒片手に吉原に出向き、奴さん上機嫌で門を出てみれば日も空けてきます。

「どうだい八つぁん、こう景気が良くっちゃあ、縄張り広げてもバチはあたらねぇだろ? 一つ、隣町まで道場破りに行こうじゃねぇか。」

「おう、こうなりゃこのままお大臣の仲間入りとしようじゃあねぇか。」

そんな調子で隣町まで出向きますと、暖簾をくぐって大口叩き勝負を挑みます。

「おい、熊さん、さっきまでの勢いはどこへ行ったい? 欲しい手がくる前に奴さん達上がっちゃったよ?」

「焦るない。あちらさんに運が早く巡ってくれば、先に上がるのは当然だろう? こっちは牌を誤魔化してやってる訳じゃあねぇんだからよ。」

「それもそうか。どれ、次は…」

ところが何度やっても先に上がるのは相手方。

モスキートが聴こえる年代には見えないし、聞こえた所で暗号通信は聴き取れる筈もない。

これは一体どうしたものかと考えあぐんでおりますと、

「おい、兄ちゃん、あんたらもしかして、なにか細工をしかけてないかい? さっきからやけに不思議そうな顔してるじゃあねェか。 折角の新顔だ、怒りはしないから、正直にいいない。」

悩んだ二人でしたが、どうにも不思議に思って、事のいきさつを話し始めました。 すると相手方、ニヤリと笑って、

「お前さん、その道具に幾らつぎ込んだね?」

「ふたつで50万でしたが、勝ち続きで20万は元取りました。」

「バカだね、お前さんがた。そんな金の掛かった道具使わなくたって、うちみたいに簡単に上がれるのに。 あんたらのうしろの男、みんなオイラ達の仲間だよ? それに、牌に細工してあるから、此処じゃあ何しても、勝ち目は無いよ。」

そのあと人から人へこの話は伝わり、遂に熊さん八つぁんの卓を囲める店は無くなったのです。